catch-img

クリスマスレター From YMCAせとうち 2019


 今年もクリスマスを迎えることができることに感謝しています。しかしながら、国内外共に平安という状況とは程遠く、度重なる自然災害のニュースや、突然舞い込んだ中村哲さんの悲報に今この瞬間も心が痛みます。

 氏は何度もこう仰っています。「武器でなく、鍬で平和を実現しよう」と。この言葉は、旧約聖書イザヤ書をベースに語られています。「預言者イザヤ」。預言者(よげんしゃ、英語: prophet)とは、「自己の思想や思惑によらず、神からの働きかけにより啓示された神意(託宣)を伝達し、あるいは解釈して神と人とを仲介する者のこと。しばしば共同体の指導的役割を果たす」人々のことです。では、イザヤを通して、神が民に伝えようとしたことは何だったのでしょうか。


 まず、「よく聞け」「よく見よ」ということ。「自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の心で悟り、立ち返って、いやされる」ことが大切なのだ。自分より強い人、偉い人の言いなりになっては、平和は創れない。」そう彼は語ります。イザヤが20歳の時、北のアッシリアと南のエジプトが世界支配を求めて対立する渦中にパレスチナはありました。その一方で、国内には社会的不正義、道徳的堕落、不信仰が広がっていました。内患外憂のさなかにあって、イザヤは終わりの日の平和の幻を語るのです。それが「剣を打ち直して鋤とし/槍を打ち直して鎌とする」との言葉。つまり、武器が農具に作り替えられる日が来るとの預言なのです。


 YMCAは、活動を通して、みつかる・つながる・よくなるという価値を提供することを約束しています。実は中村哲さんも若い頃にYMCAと出会ったことが、その人生を大きく決定づけました。中村さんは、九州大学YMCAの卒業生で、仲間と哲学や聖書に触れることを通して、人間のこころの問題、精神に興味を持つようになり、医学部卒業後は、国立肥前療養所の精神神経科の勤務を選ばれました。その療養所で患者の話を聞き、相手の世界をそのまま受け入れ、その人の傍らに寄り添うようにして気持ちを理解しようと努められたこと、のちにアフガニスタンという異国の地で、自らの価値観による正義感の押し付けをせずに、彼らの世界を受け入れ大切に、ひたすらに共に生活し、自分ができることをする、若い時代の感受性と学び、経験が中村哲さんの生き方を定めました。

 学生YMCAから誕生した、日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)からのペシャワル赴任の打診を、二つ返事で引き受けられ、同時に、YMCAの仲間、志を同じくする人たちによって彼の活動を支援するために設立されたのがペシャワール会であり、事務局は福岡YMCAでした。中村哲さんが37歳のときでした。これらの体験が「武器でなく、鍬で平和を実現しよう」に繋がったのだと思います。このような原体験をYMCAとの出会いで圧倒的に人生が変わったという方々は、実に多く存在しているのです。

 そのようなことを想い、2019年度も豪雨災害で被災した真備や平島のこどもたちの支援活動を継続してきました。一連の活動をまとめたレポートも発行させていただくことができ、改めて多くの方々のご支援を可視化することもできました。社会の状況や構造によって不利益を被っている方々、特に災害時における支援が必要なところや、ひとりぼっちで助けの及ばない困った状況下にあるこどもたちのところにこそ、YMCAは働きを行い、ポジティブネットを広げていくことをブランディングの作業を通して宣言しています。新しい年も、そんなひとりひとりに寄り添わせていただくことで、課題を解決していくことに全身全霊をかけて関わっていきたいと願っています。そのためのご寄附も現在継続して募集しております。ご協力下さい。


 願わくば限りなく、メリー・クリスマス!
 新しい年もどうぞよろしくお願いします。    2019年 アドベント